[R18][SenUra] 恋人≠妄想×エスカレーション

Author: さい

Link: https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18013589

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はぁ、と息を吐いてエレベーターを降りて自宅へと足を進める。直気が重い。lやっと迎える久々の休日だっていうのに全然心は弾まない。それよりも大きいのはこの先に待つ不安だった。今日は大丈夫かな。アレ、入ってないといいんだけど。

握っていたキーケースから鍵を出して鍵穴に差し込んでから一回転させて解錠する。

ドアノブを握って扉を開いて内側に設置されたポストを覗き込んでまたかと溜息を一つ。シューズラックの上に置いておいた使い捨てのビニール手袋をはめてポストに入っていたそれを掴んだ。直ぐに一緒に入ってた手紙も手にしてリビングへと足を進め蓋のついたゴミ箱へと投げ込む。

「最悪…」

ぺちゃりと嫌な音を立ててゴミ袋の奥底へと消えていったのは使用済みのゴム。一緒に手袋を放り込んで手は念入りに洗って消毒まで済ました。

ソファに倒れ込んで顔を横に向けると愛娘が気持ちよさそうにゲージの中で寝ている姿が視界に入ってつい頬が緩んだ。

でも、直ぐに悩みのタネのことを思い出して胸が重くなる。ローテーブルに散らばったままの手紙を一通手にとって内容を見ては気分が悪くなっていく。手書きじゃなくてPCで打ち込まれたのかその手紙は綺麗に文字が羅列していた。

「好きです、待ってます…か」

内容は見ればあぁ、ストーカーだなってすぐわかるようなもの。好きです、待ってます、早く一緒になりたいです。悪寒がする手紙の数々は一応証拠保存のために全部手元にある。それだけの被害ならまだ無視できたのに、問題なのはあのゴム。中には思い出したくも無いが男の精がつまっていた。

「本当にどうするんだよ、これ…」

最近の俺の悩みは男なのに男からストーカーにあっていることだった。始まりはいつだったっけ。もう一年くらい続いているこれは初めの内は可愛らしいものだったな。最初はシンプルな手紙から始まっていたものが段々と悪化していってここ一週間はこんな物を送ってくるまでになった。オートロックマンションの筈なのに下の集合ポストではなくて個人のポストに投函されていることが余計に怖い。放置していた自分も悪いけどまさか男だとは思わなかったし、ここまでされるだなんて想像もつかなかった。

初めて見たときは我慢できず吐いてしまうほどの嫌悪の塊であるあれは漸く流せるまでになったが日々俺の精神力をごりごりと削っていく。お陰で寝不足だし身体のコンディションも最悪だ。警察に言おうにも俺自身に被害はないし、男が男にストーカーされているだなんて恥ずかしくてあまり口に出したくなかった。

スマホでストーカー被害の例を調べてみるとやっぱり俺に起こっている事象と被っている。スクロールすると中には男が盗撮した写真に自分の精をかけて対象者にそれを送って欲を満たすだなんて事例も載っていた。

「うっわ、写真にかけるとかキモすぎ」

さらに、それを送るだなんて余計に。自分でも顔が歪むのがわかる。明後日だってハウスでセンラと企画の話があるっていうのにこんな顔で行きたくない。そうは思ってもこれも仕事の一環だし、体調管理も出来てないだなんて大人としてあってはならない事。明日一日で回復すればいいんだけどそんな都合よくいくかどうかは分からない。はぁと何度目かわからない溜息を吐いてごろりとソファで寝返りを打った。

ーーーーーーー

「…って、ことなんですけど…うらたん?」

「え?あ、ああ…ごめん」

眼の前に広がるのは食材の数々。今度は料理企画でもいいんじゃない?なんて俺の一言でのったセンラがじゃあ話が流れる前にと早々に打ち合わせの予定を決めて今に至る。

「最近うらたん顔色悪ない?」

「いや、そんなことないと思うけど」

「うーらたん」

「おわっ!」

一気に近づくセンラの顔に吃驚して、素っ頓狂な声が出てしまってそれを聞いて眼の前の男はムッとした表情になる。

「えぇ?そんな吃驚せんでもええやろ」

「ほらセンラの顔って何か圧があってさ」

「なんやそれ」

「ふひひ、ごめんごめん」

じゃあ企画の続き考えようかと野菜を一つ手に取ろうとするとうらたんと再びセンラは俺の名を呼んだ。

「良かったら相談のりましょうか?」

「…え?」

「やっぱり顔色悪いて。リーダーだからって何色々か溜め込んどるんちゃう?不安は共有しといたほうが気持ち軽くなるやろ?」

な?と優しい声が耳へ届く。男が男にストーカーされているっていうのも言い辛い理由の一つだったけど一番大きいのはメンバーの3人に迷惑がかかるのが嫌だったから。言うと変に心配をかけてしまうと思っていたがセンラの提案に心が揺さぶられる。センラに、相談してみようかな。

頭に浮かぶのは最近悩まされているストーカーのこと。この後帰宅してもまたあれに悩まされるのだろうか。俺への好意を綴った手紙と男の精がつまっているゴム。余程酷い顔をしていたのかセンラは大丈夫?と俺の顔を覗き込む。

「…センラ、最近ちょっと悩んでてさ」

話、聞いてくれる?そう言うとセンラは任せといてと俺に微笑みかけた。

ーーーーーーー

「どうぞ、入って」

お邪魔しますと玄関の扉を抜けてリビングへの廊下を歩く。結局企画の話は次回へ持ち越しということになり、珍しくセンラから自分の家はどうですかという問いかけに頷いて現在に至る。

それにしてもあまり来ないセンラの家はやっぱり新鮮だ。

「せんちゃん、ここ何の部屋?」

「そこは配信部屋やから。こら、あんま動き回らんといて」

「へー、あ!ここは?」

「そこはお手洗い。ちょお、だるいって」

ここぞとばかりだセンラの家を探索して歩き回ると律儀にもセンラは後ろについて説明をしてくれた。いつもはかまちょをしてもあしらわれるけど今は全部返してくれるセンラに少しだけ調子に乗ってしまう。

「ひひ、ここは」

「…あかんよ」

「…え?センラ?」

「そこは恥ずかしい物が沢山あるから駄目。ほら、早くリビング行きましょ?」

何個かある扉のうちまだ中を覗いていない部屋のドアノブに手をかけると静かにセンラは俺の手を引く。やっば、調子乗りすぎたかな。怒ってないかな、とセンラに手を引かれながら顔を見上げる。

「ふふ、怒っとらんよ。ほら、座ってください」

「ん、ありがとう」

その言葉にホッとしながらソファに腰を沈めるとセンラは少し間を空けて隣へと腰掛けた。

「それで?うらたんは何悩んどるの?」   

いつの間に手にしたのかセンラはテーブルにペットボトルのお茶を置きながら俺に問いかける。改めて聞かれるとやっぱり口に出しづらくて少しの沈黙が訪れた。

「大丈夫やから。ほら、センラに教えて?」

センラ、本気で心配してくれてる。俺を安心させるかのような優しい声色に閉じていた口をゆっくりと開いた。

「えっと、さ…俺、最近ストーカー被害がすごくてさ」

「ストーカー?え、ほんまに?それ警察には言うたの?」

「…言ってないけど」

「それ大丈夫なん?もっと早く言うて頼ってくれへんの?」

「お前らに迷惑かけられねえだろ。それにあんまり大事にしたくないし」

「うらたん、俺達何年一緒に活動してきたと思ってます?」

ぎしりとソファが軋む音がしたと思って視線を横に移すとセンラはこちらに体を向けていた。自然と自分も向き直る体勢になるとあのな、とセンラは口を開いた。

「リーダーだからって周りに頼っちゃ駄目なわけやないやろ?そんなん言わんほうが迷惑やし」 

「…うん」

「あー、別に怒っとるんとちゃうよ?ただな」

何かあったら今回は俺だけでもいいから頼ってください。そう言いながらセンラは膝に置いていた俺の手をきゅっと握った。その体温がやけに安心できて不思議と笑いがこみ上げる。

「ふふ、ありがとう。センラに話したらちょっとスッキリした」

「ほんまにあかんと思ったらすぐに言うんよ?」

「うん…本当にありがとう」

真摯に相談に乗ってくれたセンラにほっこりと胸が暖かくなった。それでもちょっと恥ずかしくなってお手洗いを借りるからとセンラに了承を得てリビングを出る。

用を済ましてリビングに戻ろうとしてとある部屋が視界に入った。そういえばこの部屋センラ隠したがってたな。彼にしてはやけに珍しい発言に怖いもの見たさで少しだけ考える。

駄目って言われたけどセンラならちょっと位許してくれるんじゃない?もしかしたらエロゲが散乱してたりするのかな。あいつ昔はちょっとやってたし。そしたら暫く誂うネタくらいにはなったりして。そんなことを考えて勝ったのは好奇心だった。

おじゃましまーすと心の内で唱えながら鍵のかかっていない扉のドアノブに手をかけて静かに開けた。中に入ってから再び音をたてないようにして扉を閉める。電気をつけていないから当たり前だけど部屋は薄暗い。ここにセンラは何隠してるんだろう。センラにとっての恥ずかしい物が気になりすぎる。取り敢えず電気をつけてみようと壁に手をつけるとかさりと紙が擦れる様な音がした。

「…え?あれ」

そこの部分だけかと思いきや一歩一歩壁に手をついて進んでみてもずっと同じ感触。明かりをつけようにも生憎スマホはトイレだけだからとあっちに置きっぱなしだから手元に周りを照らせるものはない。

取り敢えず部屋の電気をつけないと何も把握できないな。なんとかカーテン越しに窓の外から差し込む光を頼りに目を細めて周りを見渡す。すると奥に机らしきものとその上に電気スタンドのような影が見えた。電気スタンドさえ使えれば明かりでなんとか電気のスイッチの場所がわかるはず。

机のある方に足を進めてその上にある電気スタンドをつけようとして側に置いてあったリモコンが目に入った。もしかしたら運がいいかもしれない。これで部屋の明かりつけれるじゃん。適当にボタンを押すとピピッと電子音がして同時に部屋が明かりに包まれる。

さて何があるのかと正面を向くとそこには写真が貼り付けられていた。ただ、それは予想だにしなかったもの。

「…ひっ…!」

壁一面に広がるのは無数の写真。しかし、そのどれもに俺が写っていた。さらに部屋全体を見回してもメンバーで写っているものなんて見当たらず、俺一人だけのもののみ。

恐る恐る壁に近づいてそのうちの一枚を見てみるとどこか違和感を感じた。これはいつのやつだ。着てる服や髪色からして多分最近のものだとは思うけどセンラに撮られたという心当たりがない。SNSの投稿用に使う時しかカメラを向けられたことがないから回数は少ない筈で覚えていると思ったのに。

「なんで…そこって…」

この写真の背景、リハのスタジオだ。それはおかしくない。でも、俺の視線は全く違う方向だった。あれ、これって隣にセンラいたよな?

まさか、と他の写真を壁から剥がしてよく見てみるとどれも俺はカメラ目線ではない。どれもこれもぶれていたり、端に物が写っていてピントがあっていないものもある。つまり、これって全部隠し撮り?何でセンラが俺の写真をこんなにも持ってるの。なんで、こんな。

「…なに、これ」

手に取っていた写真を再び見ると何やら汚れがある。白く顔の部分に付着している一筋の汚れ。手で擦ってみようとして嫌な予感がしてふと動きを止めた。縦にしても動きのないそれは固まっているがとあるものを連想させる。この写真は以前見ていたストーカー被害の一覧にあった事柄と酷似していた。

『うっわ、写真にかけるとかキモすぎ』

先日自分で発した言葉が頭を巡る。あれ、もしかしてこの白いのってもしかして精液?想像もしたくないけど俺のことをオカズにシたって事?

頭に浮かぶのは連日行われるストーカーからの嫌がらせだった。あれ、何でこんな時にストーカーの事を思い出すんだろう。でも、だって。これだと辻褄が合う。センラがストーカーだって考えたら何もかも腑に落ちた。男で、あの手紙とゴムは彼によるもの。直接個人のポストに入れられたのもオートロックの解錠番号を知っているメンバーだからこそ。そして、この部屋が何よりの証拠だ。

相談のってくれるっていったのももしかして全部ぜんぶ、俺のこと___。

「や、だ…」

ひらひらと足元に落ちる写真ですら畏怖の対象になる。

少しずつそれから離れるように後ろずさりながらバクバクと鳴る胸を服の上からぎゅっとおさえた。はぁはぁと浅くなる息に胸が苦しくなる。何が起こっているのか頭がこんがらがってちゃんと考えられない。

どうしよう、どうしよう。はやく、逃げないと。早くこの部屋から、この家から出ないと。漸く思考が働き始めたその時だった。前を向いたまま無意識に逃げるように動いていた足が止まり気の抜けた声が口から溢れる。

「…え?」

トン、と背中が何かに当たった感覚。あれ、どうして。まだ部屋の中心辺りなのに、壁はまだ後ろなはずなのに。振り返ろうとした瞬間、鼻孔を掠るのはさっきまで隣にいたあいつの香り。

「うらたん、こんな所でどうしたん」

「っ…!」

背後から降ってくる声にぞわりと背が粟立った。抑揚のない平坦ないつもどおりの彼の声。それなのに、怖くて堪らない。恐怖のせいなのか喉はひくりと震えるだけで音が出ない。

「遅いから心配したやろ」

「…ぁ…せん、ら」

ようやく絞り出した声はいつもの自分からは考えられないほどか細くて小さい。センラの表情は確認できないが良いものではない事が伺えた。

「ここも入ったらあかんって言ったのに」

「そ、れは…ごめん…」

「まぁ、別にええけど次からは気をつけてな?」

いつもの様に振る舞って俺に声をかけるセンラが不気味に感じる。こんなにも異様な空間なのにセンラは動じず俺の頭に手を置いた。きっと撫でようとでもしてくれたんだろうが今の俺にとってその行為は恐怖でしかない。

反射的にそれを払うとセンラはぴたりと動きを止めた。

「…うらたん、駄目やろ」

「っ…でも」

「でもやない。何で?何で俺のことそんな怖がっとるの?」

するりとセンラの指が俺の頬へ触れる。それが気持ち悪くて一歩後ろへ下がると頬に添えられていた指が下に降りて手首を掴んだ。そのまま引き寄せられて手首を握っていない方は俺の背に回される。

「せん、ら…!いや、やめっ」

「嫌?そんなわけ無いやん。うらたんも待っとったもんな?」

「そんなわけあるか!」

「…待っとったやろ?」

「はっ…くそ、わけ分かんねえこと言うなよ。待ってねぇって言ってるだろ!いい加減にしろ」

「…は?何でそないなこと言うん?」

今まで聞いたことのないセンラの地を這うような低い声が鼓膜を揺らしギュッと手首を握る力が増す。痛いのにそれ以上に怖くてセンラに反論する言葉が出てこない。逸らさず交わったままの瞳は昏くも濁っているように見える。

「うらたん、もういいですよね?いい機会やし」

「なに…が」

「ひっどいわぁ。あんなに伝えてたのに」

そろそろ一緒に住みましょうよ。そう言ってセンラは俺を部屋の奥へと引っ張った。その先にあるのはベッドだけで頭の中では警告音が鳴り響く。抵抗しないといけない。今逃げないともう一生ここから出られない気がした。

「っ、うらたん!」

恐怖で震える身体に活を入れて渾身の力を込めてセンラの手を振り払う。俺が抵抗しないと思っていたのか予想より力が入っていなかったのか案外それは簡単に解けた。カバンとか靴とかはもういい。ここから脱出することだけを考えて扉を開け、玄関へと走った。チェーンを外して鍵も急いで解錠して外へと足を進める。はぁはぁと何時もより息が上がっている気がしたけど気にせず足を動かした。

エレベーターはどこだ。いや、エレベーターだと待ってる間に追いつかれる。階段を探さないと。きょろきょろと辺りを見渡してそれらしき扉を見つけてから急いで駆け寄った。裸足だけどそんなのはもう関係ない。ドアノブに手をかけて撚ると鍵はかかっていないらしく簡単に開いた。

「やった…」

後はここから1階へ下りてマンションを抜け出すだけ。この時間だから人は居ないかもしれないが外に出ればこっちのもんだ。既に切れた息を整える間もなく走ろうと足を踏み出したその時だった。

「…どこ行くん?」

ドアノブを握っていた手の甲の上に重なる熱は誰のものかなんて考えずともわかる。それと同時に反射的に振り払おうとするとギュッと力強く手の甲を彼の手の平が覆う。

「次は離さんからな」

「…離せよ!」

「はは、うらたんったら恥ずかしがりややなぁ」

「だから!っ…」

急に襲い来る浮遊感に一瞬息をするのを忘れそうになった。宙に浮く足に一気に近くなるセンラとの距離。あれ、俺センラに持ち上げられている。遠くなる非常階段の扉に直ぐに自分がどうなっているか理解して暴れると力強くセンラの手が口を塞ぐ。

「しーっ、静かにせんと周りに迷惑やから」

「んん、んぐ、ぅ」

さっきまで走っていたせいか口まで覆われて息がよりし辛い。酸素をまともに取り込めない頭はくらくらして視界が少しだけ霞んだ。

俺を抱えながらなのに器用に口まで塞いでセンラは踵を返して来た道を引き返す。バタン、と扉が閉まる音は地獄へのカウントダウンのように感じた。

「あ、ごめんなぁ。苦しかった?」

「はっ…ぁ…はぁ…」

「部屋行くまでに息整えなあかんよ?」

「え…?ぁ、やだ、おろせ!は…っ」

「ほら、到着」 

センラが足を踏み入れたのはあの写真が一面に貼り付けられた部屋。ずんずんと奥へ進み見えるのはダブルベッドで全身が嫌な汗で包まれた気がした。

「やめ…っ、センラ…ぁ、っ…ん」

ベッドの上へ降ろされるやいなや、ぐっと強い力で体を押し倒され、股の間にセンラの足が入り込む。拒もうにも俺よりも遥かに力が勝っているセンラに敵うはずもなく抵抗なんて意味がなかった。俺の腕を手のひら一つで纏め上げて頭の上で固定したセンラは膝でぐいぐいと俺の下半身を刺激する。

「…ずっと待ってたんですよ。それなのにうらたんったらいけずやわ」

「ひっ…んんっ…やぁ…っ!」

するりとセンラが捲り上げた布の隙間からひんやりとした外気が流れ込んで肌へと触れる。じっとりと汗ばんだセンラの手は段々と上へと這い上がってきて危機を感じて身を捩るがそんな些細な動きはセンラにとって妨げにはならなかったようだ。

「俺の家知っとるはずやのにおかしいなぁって。一年も我慢したけどもう待てへんくてさ」

もう待つのはええかなって。そう悪怯れもなく微笑むセンラに背筋が冷たくなる。あれ、センラってこんなやつだっけ。こいつは誰。本当に目の前にいるやつはいつも馬鹿やってるメンバーの俺が知っているセンラ?

どこまでも奥が深くて見えない金糸雀色の瞳は俺だけを映していた。嬉しそうに細められる目元に怪しく光る瞳から視線を逸らすことが出来ず、吸い込まれるようにそこから目が離せない。

「ふふ、うらたんじーっと見てどうしたん?俺の事好きすぎやろ」

「ち、が…」

「不安そうな顔せんでもちゃんと今までの分も愛したるから」

「っ…いい!そんなんいらなっ」

「は?何で?悪い口やな」

一気に近づくセンラの顔に驚いてぎゅっと瞼を閉じると同時に唇には熱が移された。無理矢理にこじ開けられた唇の隙間からは唾液で濡れたセンラの舌が挿入されじっくりと中を探る。俺キスされてる。そう理解するのと同時に顎上をぬるりとした熱がなぞり喉が震えた。

「んっ…せん…んぅ…」

「…逃げちゃあかんよ」

一旦離れた唇は直ぐにまた合わさる。くちゅくちゅと口内で唾液を混ぜるように暴れ回るセンラの舌は時折俺の身体に甘い痺れを感じさせた。それが怖くてぐっと残った力で彼の胸を押すとそれに気を悪くしたのか頭にセンラの手が添えられ、言葉通り逃さんと言わんばかりに動きを制限される。

「ぅ…ぐ…んぅ…ぁ…」

混乱する頭の中、何とか息を取り込もうと口を開く度にどちらのものか分からない唾液が隙間からは顎へと伝った。
 
「うらたんお行儀悪いやろ?」

センラの指が顎の下をなぞり、擽ったさで顔を背けるとそのまま親指も使って器用に正面を向かされる。

「せ、んら…ちょっと落ち着けよ…な?」

「…うらたん、やめて欲しいんや?」

その問いに何度も頷くとセンラは頬を緩めてにっこりとこちらに笑みを向けた。

「センラ…」

もしかして少しは分かってくれたのかも。そんな淡い期待も直ぐに彼の言葉によって崩れ去る。

「何でそないなこと言わすの?俺達がしてることは恋人同士だったら普通やないの?」

「こいびと…?お前何言ってるの」

「うらたんこそさっきから変やで?何で俺のこと何で避けるん?」

「そ、んなの…お前がストーカー、だから…怖くて」

「は?ストーカー?何言っとんの?俺はうらたんの恋人やろ?あぁ、でも…」

うらたんにストーカーがおるの知らんかったから不安にさせて混乱しとるんやな。ごめんな、とセンラは眉を下げて言った。それも心底申し訳無さそうな声色で。

何、なんだよこいつ。ストーカーはお前じゃん。

「ちが…お前は恋人なんかじゃなく、て…ッ!」

「…うらたん、そろそろ俺も怒るで?」

抵抗すら許されない程強引に再び口を塞がれる。

「っ…んぅ…ッ…はぁ…ぁ」

「ふふ、うらたんやっぱり慣れとらんね」

嫌なのに本気で拒めないのはこいつが長年仲良くしてたメンバーだからなのか、ただ力で敵わなかったからなのかはわからない。再び肌をなぞる手の動きにぴくぴくと身体が勝手に反応する。

「はっ…ぁ…あッ!」

ツン、とセンラの指先が触れたのはまだ触ってもいないのにぷっくりと腫れた乳首だった。中心をぐりぐりと押し込まれて拉げたそこは全く見えない箇所なのにどうなっているのか容易く想像ができる。

俺の反応にセンラは楽しそうに笑った。最悪だ。センラに、ばれたかもしれない。普段から俺が自分で乳首触ってたの。恥ずかしくて手で顔を隠すとセンラは可愛いですねと喜々として言葉をこぼす。それがまた羞恥を煽った。カァっと自分でも熱くなるのが分かる頬はきっと真っ赤に染まっているのだろう。シャツの中から手が抜かれるが、布を押し上げて主張するそこは分かりやすく存在を示している。

「俺、ずっと見とったから今更恥ずかしがらんでもええやろ」

「へ…?ぁっ、なに、を」

「ん?うらたんがな」

自分でこうやってるところ。そう言ってセンラは俺のシャツを脱がす。顕になる胸の粒を惜しげもなくセンラはギュッと抓った。それと同時にびりびりと電流が流れたかのような快感が背を走る。

「ぁ…ッ、あ゛あっ♡」

「うらたん最初は強く触るやろ?んー、この体勢やとやり辛いなぁ」

よいしょとセンラは俺の背に手を回して徐ろに体を起こす。一旦向き合う形になったかと思いきやセンラは俺の背を胸元に引き寄せて抱きしめてきた。所謂バックハグってやつでこれが本当の恋人同士だったら胸が弾む展開なのに相手がセンラとなるとこれから何をされるのか気が気じゃない。

前へ回されたセンラの手が上半身何も纏ってない俺の身体を下からゆっくりとなぞった。辿り着いたのは先程も弄くり回されていた胸の頂できゅっと弱い力でそこを摘まれる。

「ぁ…ぅ…んぅ…」

「想像よりもやっぱりええなぁ。カメラだと画質が荒くて」

「ひゃっ…な、に…どういう…ッあ、ん」

「いっつも画面越しやったからなぁ」

センラの発する言葉の意味を頭で噛み砕こうとしてもそれをかき消すように襲い来る快楽に腰が跳ねた。

「ぅ…ひゃっ」

「ふふ、可愛い声」

親指と人差し指でぴんと張った胸の中心をぐにぐにと揉みしだかれるように刺激されて快感を拾う様に身体が熱を帯びていく。奥底から湧き上がる抑えきれない悦に浸りながらぼーっとしていく思考。バクバクと高まる心臓はきっとセンラにも届いてる。拒みたいのに自然と口からは拒絶するものではなく甘い喘ぎ声が溢れ落ちていた。

「はぁ…ッ…ぁ、っあ…やぁ、せん、ら」

「ん?なぁに、うらたん」

「あ…ッ」

左の胸を触り続けながらセンラは空いている手で俺の下半身を弄る。胸に与え続けられた刺激に下半身もすっかりと反応していた。手のひらで撫でるように横に擦られて甲高い声が部屋に響く。

「ほんま喘ぐと声高なるなぁ」

「ん、んっ…ぁ」

「我慢せんでもええんよ?」

首筋にぬるりとしたものが這ったかと思ったらチクリとした痛みを一瞬だけ感じた。

「っ…う、いたっ…やだ、やめろ…ッ」

「そんな寂しいこと言わんといて?うらたん感じとるやろ?気持ちいいもんな?」

「感じてなんか…っ、ちが、やだ…はっ…んん」

はむはむとそこを甘噛みし続けるセンラは手の動きも止めず俺の身体を翫ぶ。左手で乳首を摘みながらも右手では布越しに下半身へと緩い刺激を与えられ続けている。感じたくなんかないのに自分で触るよりも敏感に反応してしまってずくりと腰が重くなった。

「ここ、こんなに熱い。俺が触って興奮してくれてるんやね」

「ひっ…!」

突然ズボンを足から抜き取られパンツの中に入ってきた手は今度は直に熱を揉みしだく。既に勃ってしまっているそこはいとも簡単に限界まで近づいていく。

今まで体験したことのない気持ち良さに自然と揺れる腰は絶頂を求めていた。

「ん、やぁ…あっ…ッんん♡」

びくびくと身体を痙攣させながら奥から湧き上がる熱を吐き出す。おれ、せんらにさわられてイッちゃった。さいあくだ、はずかしい。その事実が受け止めきれなくて乱れる呼吸の中、正常に思考が働かない。力が入らないせいで完全に背をセンラの胸元に預けて大きく開かれた足はぴくぴくと震えていた。呆然としている俺を他所にセンラはごそごそとまだ手を動かす。染みのついたパンツを脱がされてセンラの手は在らぬところに伸ばされていた。

「あ…っ、どこ、触って…っ」

つぷりとセンラの指が押し込まれたのは自分でも触れたことのない秘部。精でぬるついた指が少しずつナカへと押し込まれていく。

「うらたんのナカ狭いけど俺の指美味しそうに咥えとるね」

「やぁっ、…せん、ら…」

ぐにぐにと指がナカで蠢いて内側の部分を刺激されるとびくりと身体が跳ねる。未知の経験なのにセンラは的確に突くとぴりぴりと快感を拾う部分に指を押し込んだ。ぐっぐっと腹の内を動く指に少しずつ身体は熱を孕む。

「あ、ぁ…っ…やっ…ァ…」

「感じやすいんやね、かわええわぁ」

途中でどこから出したのか潤滑剤を手にしたセンラは中身を手で遊ばせてから俺の秘部へと塗りつけた。次第に異物感が大きくなってナカを搔き回す質量は増えていく。苦しいのにバラバラに動かされて広げられるナカはそれを求めるように締め付けて反応を示していた。嫌なのに勝手に快感を受け止め始める身体は痙攣しては時折大きく跳ねる。

「んぁ…ッ!は、っ…んん」

「…そろそろええかな」

どれ位続けられたのかわからないその行為はセンラの呟きと共に急に終わりを迎えた。これで解放されるのかと安堵したのもつかの間、力が抜けて動かない身体をセンラはよいしょと自分と正面に向き合うように抱え込んだ。

「ひ、っ…」

熱くて硬度のあるぬるぬるとしたものが秘部へとあてられる。ぬちゃぬちゃと粘着質な音をたてながら擦り付けられるそれが何かなんてこの状況では考えなくても分かってしまう。

「うらたんなら受け止めてくれますよね」

「ゃあ…っ、やだ、やだやだ…っ」

「ほら、挿入いっちゃう」

擦り付けられていただけの熱はセンラの手によって秘部をこじ開けるように肉癖を掻き分けてナカへと入り込む。自分の意志とは反してひくひくと収縮するナカはゆっくりとセンラの昂りをのみこんでいく。抵抗しようと足に力を入れようとするとぐっとセンラは俺の腰を掴んで一気に下へおとした。

「は、ッ…ひっ…!やっ…あ゛ァ!」

「はぁ…うらたんのナカあったかいなぁ」

「ぁ…あ…んっ…やだ、いや…」

センラは満足そうな声を上げてゆさゆさと軽く腰を揺らす。その動きだけでもナカはきゅっと歓喜するように受け入れた熱に絡んだ。

「うらたんどう?痛くない?」

「あっ…っん…も、らめ…ッ」

センラの膝の上で腰を掴まれながら前後へ身体を揺すられる。前立腺をぐいぐいと刺激されて迫り上がる熱に身体は喜び始めていた。

なんで、センラとこういうことしてるんだっけ。ストーカーで悩んでいたのを相談しようと思って、それで…それで。どうしたんだっけ。あれ、センラがストーカーで逃げようとしてそれから、俺は。

「何考えてとるの?俺に集中して?」

「あぁっ♡も、きもちぃのいらなぃ…ッ、やだぁ」

「何で?ええやん、俺達恋人やし」

「こいびと…ちがっ…」

「違わんて」

な?と耳元で囁かれてぶるりと身体が震える。

「だって今こうしてるのも俺たちが付き合ってるからやろ?」

「そ、んな…んんっ」

「そうやろ?」

耳の穴に舌が差し込まれてぴちゃぴちゃと厭らしい水音が直接脳に響く。

「はっ…ぁ…んぅ…ん♡」

「ほら、好き同士やからこんなに気持ちよくなっとるんよ」

「ん、っ…ぁ、れ…きもちぃ?すき?」

きもちいいし、すき、どうし。じゃあ、おれもセンラのこと好きなんだ。ああ、なんだ、そっか。なら、いっか。

ーーーーーーー

んん、と最初の頃とは違って隠すことなく甘い声を出して俺に縋り付くうらたんに上がった口角が下がらない。

ずっとずっと見てきた。今俺の腕の中で恥ずかしい姿を晒してあんあん喘ぐうらたんは反抗的な態度は何処やらで従順に動いてくれている。腰をゆさゆさと揺らしながらもその事実が堪らなくて思わず口づけをして、はしたなく開けられた唇の隙間に舌を差し込んだ。

「ん…っ、ふぅ…ぁ」

「…ん、もっと舌絡めて」

「ぁ…んんっ…ッ、んぅ」

うらたん自ら伸ばされる舌に気分が高揚してじゅるりとそこを吸うと鼻にかかる声が間近から聞こえた。せんちゃん、なんて俺のことを呼ぶうらたんは蕩けた目で俺を見つめている。ああ、やっとこの手の中に収まってくれた。

初めてうらたんと顔を合わせた頃は今の様な関係になるとは思わなかった。こんなにも可愛い人だなんて知ったのは少し後になってから。たかが2歳年上の高圧的な態度の有名な歌い手。最初はそんな程度の認識だった。でも実際話してみるとまぁ強い物言いは想像通りだったけど、思ったよりも怖いとは感じない。初めこそ取っつきにくい人だと思ってたのに心を許した人にはとことん甘いこの人は他人を誑かすのが上手だ。本人は友達がいないと豪語してるけどきっと周りはそんなのと思っとらんやろ。口は悪いけど世話焼きな彼は周りから好かれている。

そんな彼を自分のものだけにしたい輩だってきっといっぱい居るはずだ。俺も例外ではなく、ちょっかいをかけては反応する度に喜ぶうらたんの姿を、ふひひと独特な声で俺の名前を呼びながら見せるその笑顔を独り占めしたいとずっと思っていた。

でもそれは現実的には難しい。まず俺達の活動内容的には表に出ないといけないし、それに何が炎上に繋がるか分からないこの界隈では慎重に行動せんとあかんもんね。うん、分かっとるよ。うらたんも俺の事好きやけどそれが怖いんやろ。だから人前では明かせんかったんよな。

全部うらたんの事は理解しとるよ。

表立って言うと照れちゃううらたんの為にここ1年は好意を手紙で周りに露呈しないように伝えたんやからね。うらたんは直接言われるの好きやからライブや企画で家を空ける時は難しかったけどできる限りは手紙を届けに彼の家へと出向いた。マンションのオートロックの解錠番号はうらたんから聞いていて難なく入れたから問題はない。メンバー全員に言っていたけどそれは俺達の関係がバレないように敢えてですよね。まぁ、部屋にもカメラを置かせて貰ってるからいつでも様子は分かるけど。

ライブなんかで泊まりの時とかはこっそり寝た後に予備のキーをフロントで借りて部屋にお邪魔させてもらったこともあった。あのゴムもうらたんが寂しがっとるって思って一緒に届けとったんやから。俺からの手紙もあんなに大切にとって読み返してくれはりましたよね。毎日は流石に俺も無理やからうらたんに少し物足りない気持ちにさせてたかもしれない。

でも、それも全部終わりだ。うらたんのナカを堪能するようにゆっくりと揺さぶっていた腰を止めると彼の気の抜けた声がする。

「え…?ん、せんちゃん…おれ、まだナカたりな…ッ!」

繋がったままどさりとうらたんをベッドへと押し倒し、筋肉はしっかりとついている癖に弾力のある太腿をしっかりと掴む。

「足りひんの?ええよ、もっとあげる。もう離さへんからね」

今日でもう俺達ちゃんとした恋人同士、やから。

ーーーーーーー

ぬぷぬぷとセンラの熱がナカから抜けていく。空っぽになる感覚が寂しくて力を入れるとくすくすとセンラの甘さを含んだ笑い声が降ってきた。

「うらたんナカきゅってしたなぁ」

「ん…だって、さみし」

「はぁ…」

溜息に機嫌を損ねたのかと不安になったがぐちゅんと一気にナカを満たす熱に声にならない音が喉から鳴る。

「ひあっ…♡ん、んぅ…あッ!♡」

ばちゅばちゅとはしたない水音が部屋に響き鼓膜を揺らした。肌と肌があわさる音も混ざってより興奮を高めていく。ぎゅっとシーツを握って熱を逃がそうとしても意味がない程の暴力的な快楽は身体を蝕んでいく。

さっきよりも乱暴にナカを搔き回すセンラの熱は奥深くに入り込んでは抜けるときにはカリが前立腺を掠っていく。その刺激に何度目か分からない絶頂を迎えようとしていた。

「はっ…うらたん、っ、どう?またイく?」

「あ、あッ♡んっイっ、ちゃ…あぁッ♡」

びくびくと小刻みに腰が揺れて出しすぎて色のない液体が性器の先からぴゅっと勢いなく飛び出る。きもちよすぎてひくひくと震える身体に頭が茹だるように熱くぼーっとする。その間もセンラは腰の動きを止めず振り続けた。 

ぱんぱんと一層肌同士のぶつかる音が増す。イッたばかりで敏感になったナカをセンラは繰り返し激しく突き上げた。入っちゃイケない部分まで熱が押し込まれる感覚にぶるりと背が震える。ぐりゅぐりゅと一点を強く責め立てられてひくひくと秘部は意志とは関係なくひくついた。あつい、少しだけ痛いしくるしいのにずっとほしくなる。おれ、せんらのもっとほしい。そんな気持ちも込めて金糸雀色の瞳を見つめるとセンラは目を細めて口の端を上げる。

「…うらたん…はぁ…出してもええよね?」

「ひゃっ…き、て?ぁあっ、もっ…ぁッ♡♡」

腰を力強く掴まれてぐっと奥に腰を進められる。そのまま熱がナカに広がる感覚がしてびくんっと大きく腰が跳ねた。

「ふ…っ、うらたんのナカひくひくしてる。気持ちよかった?」

「…ぅん…はぁ、あ…っ」

「ふふ、もう少しこのままでもええ?」

「はぁ…ぁ…うん…ッ♡せんら…ね、ちゅうしよ」

センラの体温を全身で感じたくて強請るように唇を薄く開く。すると直ぐにあわさる熱に瞼を閉じる。唇を啄まれもどかしいその行動に自ら舌を伸ばしてセンラの唇を舐めた。しっとりとした熱が心地よくてセンラの首に手を回してひっつく。くちゅくちゅとお互いの唾液を交換するように激しく舌を絡めて唇を離す頃には息が切れていた。

「うらたん、これでやっとずっと一緒やね」

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