#1[R18][ShimaSen] 永遠の命を捨ててでも・前編
Author: スピリッカ
Link: https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=22069994
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〈大前提〉
・nmmnです。意味のわからない方は読まずにお引き取りください。
・お名前をお借りしている方々とは一切関係ございません。
・迷惑行為はおやめください。ルール、マナーを守ってお楽しみください。
・ブックマークしていただける場合は必ず非公開でお願いいたします。
〈作品・作者について〉
・人間のsmさん×神社の神様snrさんの、二十年ほどにわたる恋物語の前編です 。後編または、中編・後編に続く予定ですがいつになるかは不明です。
・全編通してsmさん視点
・ショタおに、一時的女体化によるショタおね(というか中学生×見た目20代)(R-18)、smさんに彼女ができたり、snrさんが非童貞だったりします
・普段女体化は書かないのですが、設定を最大限生かそうとしたらこうなりました
・中編か後編にmbsn(過去の回想)がある予定です
・宗教的な部分の設定はおおらかな目で見ていただければ幸いです
・作者は関東人なので方言はご容赦ください
・ファン歴も浅いため色々とご容赦ください
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子どもの頃は両親と弟と共に、片田舎にある父方の祖父母の家に同居する形で暮らしていた。
祖父母の家の近くには、古びた小さな神社があった。正式名称は「千羅神社」という名で由緒正しい謂れがあるらしいが、詳しいことはなぜか誰も知らなかった。しかも、俺が物心ついた頃にはそこは既に無人の神社だった。
昔はいたはずの神主もいなければ氏子もいない、土地の所有者はいるはずだが完全に放置されている。それでも近隣の住人がボランティア精神で掃除や修繕をしているおかげで、どうにか鳥居も社殿も朽ちることなく形を保っていられているらしい。ただ、それを行っているのは信心深い老人ばかりなので、完全な廃神社となるのも時間の問題だろうと言われていた。
老人たちはこの神社自体、あるいはそこに祀られている神様のことを「センラ様」と呼んでずいぶんと慕い、敬い、畏れていた。なんでも、ここの神様は大変なご利益がある一方で、粗末にしたり無礼を働いたりすれば恐ろしい祟りをもたらすらしい。
具体的な祟りの内容は不明だがご利益に関しては明確で、心をこめて熱心にお参りをすれば、金運でも健康でも、縁結びでも子宝でも、その願いが邪なものや分不相応なものでない限り必ず叶えてくれるのだという。たとえば、「宝くじを当てて一生遊んで暮らしたい」という怠け者の願いは聞き入れてもらえなかったが、貧しくて子どもの学費を捻出できなかった親が身を粉にして働く合間に一生懸命参拝をした結果、道端で一枚の宝くじを拾い、それがちょうど進学に必要な分の金額の当たりくじだった――などという伝説めいた話がまことしやかに伝わっていた。
また不思議なことに、誰も管理していないはずなのに賽銭箱の中のお金や境内に置かれたお供え物、絵馬などはいつの間にか消えているのだという。それ泥棒ちゃうんかと言うと、この辺にそんな罰当たりなことする人はおらんと祖父母に一蹴された。第一、泥棒なら特に価値のない絵馬まで持っていくのはおかしいだろうと言われ、なるほどと納得したのを覚えている。
俺の祖父母も例に漏れずにこのセンラ様の信奉者だった。散歩の途中には必ず立ち寄ってお参りしていたし、境内の掃除やら草むしりやらもよくやっていた。
両親と弟はあまり興味がないようだったが俺はなんとなくこの神社が好きで、たびたび祖父母にくっついてお参りや掃除の手伝いをした。こうしてセンラ様に対する親しみと畏怖の念は、幼い俺の心にも自然と植えつけられていった。
「彼」と出会ったのはまだ俺がほんの少年の頃だった。
その夜、弟が急に体調を崩し、熱を出した上に嘔吐と下痢を起こして両親に車で病院へ連れていかれた。後から聞けばただの胃腸風邪だったのだが、俺はてっきり重大な病で弟が死んでしまうのだと思った。
心配で泣きじゃくる俺を、家に残った祖母がなだめてくれた。
「大丈夫よ、センラ様へお願いすればすぐに良くなるわ」
祖母の提案で、俺は祖父母に片方ずつ手を引かれてセンラ様へとお参りに行った。今思えばそれほどの重病ではないということはさすがに祖父母もわかっていただろうが、俺を落ち着かせるための手段としてそうしたのだろう。
どうか弟を助けてくださいと、俺は必死に祈った。
帰宅後は早々に寝かしつけられたが、どうしても眠れなかった俺はもう一度センラ様へ向かうべく、大きめのぬいぐるみを身代わりに布団へ寝かせてこっそりと家を抜け出した。一度だけのお参りでは心許ない、もう一度お参りしてセンラ様に念押ししておこうと、子どもなりに考えたのだ。だが祖父母にそれを言えば「もう大丈夫だから寝てなさい」とでも言われるであろうことも、これまた子どもなりに予測がついた。結果として真夜中に一人で家から抜け出すという、幼い子どもにとっては最大級の冒険へと踏み出すことになった。
夜の神社などその頃の俺には恐怖の対象でしかないはずだが、弟が死んでしまうかもしれないという怖さに比べれば難なく乗り越えられた。鳥居をくぐって社殿の前に立つ。古びた賽銭箱に入れられるものは何もなかったが、俺は頭を垂れて手を合わせ、何度も祈った。
「センラ様おねがいします、弟をたすけてください。センラ様おねがいします、弟をたすけてください」
どれくらいの時間が経ったのだろう。大人が一緒にいるわけでもなく、後ろに人が並んでいるわけでもないから、止め時がわからない。こっそり抜け出してきたから着替えはおろか何か羽織ることもできず、パジャマしか着ていない身体はすっかり冷えきっていた。
「おいおい、そんな格好しとったら風邪ひくで」
不意に大人の男性の声が頭上から降ってきた。近所の人に見つかってしまったのだと思って顔を上げると、着物姿の若い男性が優しい笑みを浮かべて立っていた。
(……きれいな人)
はんなりした和風美人、などという概念は当時の俺にはなかったわけだが、後から言葉にするとしたらまさにそんな印象だった。子どもの俺に大人の年齢を言い当てることは難しかったものの、二十代の後半くらいに見えた。本当なら暗くて年齢も顔立ちもはっきりわからないはずなのに、この人の周りだけが発光しているかのように明るい。
「坊や、さっきもおじいちゃんおばあちゃんと一緒に来とったな」
「……うん」
「それに、よくお掃除しに来てくれとるなあ」
なぜ知っているのだろう、と思った。やはりすぐ近くに住んでいて、目撃されていたのだろうか。しかし、こんな小さな町のご近所さんであれば今まで顔を合わせていてもおかしくないはずなのに、この人にはまったく見覚えがない。
「弟のこと、心配なんやね。ええお兄ちゃんやな」
男の人の手が伸びてきて、頭を撫でてもらった。
「ほら、これ着とき」
パジャマの上からあったかい半纏のようなものを着せられる。手ぶらのように見えたが、一体どこから取り出したのだろう?しかも俺のサイズにぴったりだった。
「なあ、弟はもう大丈夫やで。ただのお腹にくる風邪や。大事をとって今夜は入院するけど、明日になったらケロッとして帰ってくるから」
「えっ?どうして……」
俺は弟を助けてくださいと祈っただけで、具体的なことは何も言っていないはずだ。無意識に口に出していたのだとしても、お医者さんでもないこの人にそんな判断ができるはずがない。
「俺、ここの神様やねん。坊や、さっきからセンラ様言うてたやろ?それ、俺やねん。せやから何でもわかるんよ」
男の人はしゃがんで俺に目線を合わせ、少し首をかしげながら微笑んでそう言った。
「ほんま?ほんまに?」
「ほんまやで。ほら、見てみ」
目の前に男の人の握り拳がぬっと突き出された。上に向けてその拳をぱっと開けば、手のひらの上に小さな火が灯った。
「わっ」
「こんなんもできるで。言っとくけど、マジシャンちゃうからな」
今度は人差し指を立てて、車のワイパーのように動かす。その跡を追って、キラキラと小さな虹がかかった。
「すごい……ほんまに神様なんや。センラ様なんやね」
「そう、だからもう心配いらんで。送ってったるから、もうお家に帰りや」
センラ様はにっこり笑うと俺の手を握って立ち上がった。俺は素直に従い、センラ様に手を引かれて家路を辿った。センラ様の手は温かくて、父や祖父のような力強い頼もしさと、母や祖母のような柔らかい安心感との両方で俺の冷えた手を包んでくれた。
「それじゃ、おやすみ。見つからんように気をつけてな」
家の前に着くとセンラ様は俺の手を放し、また頭を撫でてくれた。俺は急にこの人と別れるのが寂しくなった。弟のことはもう心配いらないとわかっていたし、早く温かい布団に潜り込みたいという気持ちもあったが、それ以上にこのセンラ様と一緒にいる心地よさをもう少し味わっていたかった。
「……ねえ」
「ん?」
「また会える?」
「おう、いつでも会えるで。坊やがあそこに来てくれれば」
「ほんまに!?」
「ああ。ただし、俺のこと誰にも言わないって約束してくれるなら、な」
「約束する!センラ様、あのな、俺、志麻って言うんや」
「志麻くん、な。ええ名前やね。俺のことは、様なんて付けんでええよ」
「ええと、じゃあ、センラさん……」
「ふふっ。そう呼ばれるのは久しぶりやわ」
そう言って笑うセンラさんの表情は楽しそうで、でも少しだけ寂しそうでもあって、俺はこの人と、いや人と言っていいのかどうかわからないが、なんだかとても仲良くなりたいと思った。
「おやすみ、志麻くん」
「おやすみ、センラさん」
手を振ってセンラさんと別れ、祖父母の目をかすめてこっそりと部屋に戻った俺は、センラさんに着せてもらった半纏を返し忘れたことに気づいた。だが、畳んで枕元に置いておいたはずの半纏は翌朝にはもう消えていた。
センラさんの言った通り、その日の昼前にはすっかり元気になった弟が両親とともに帰宅した。俺は言いつけを守って、センラさんに会ったことは誰にも口外しなかった。
その後、俺はすぐにセンラさんに会いに神社へ行った。
まずは祖父母に連れられて、弟が一日で回復したことのお礼参りに来たのだが、当然その時はセンラさんの姿は見えない。
一人の時間ができた時に、友達の家に遊びにいくふりをしていそいそと神社へ出向いたのだが、あいにく散歩がてらお参りに来たらしい近所のおばあさん二人が境内で井戸端会議をしていた。
俺は物陰に隠れておしゃべりが終わるのを待ち、誰もいなくなってから社殿の前へ向かった。
センラさんは、ここへ来ればいつでも会えると言ったけれど、自分のことを誰にも話してはいけないとも言った。ということは、きっと姿を見られるのもダメなはずだ。
昼間はしょっちゅう近所の人がやって来るというのに、誰にも見られず会うことなんてできるのだろうか?
しかし俺のそんな疑問はすぐに解消された。社殿の前に立ち「センラさん」と小声で呼ぶと、社殿の扉がひとりでにゆっくりと開いた。一歩足を踏み入れれば、すぐに後ろで扉が閉まる。そこに広がる光景は外から覗き見える社殿の内部とはまったく異なっていて、近所の人に見つかる心配のない別世界へと自分が招かれたことはすぐに理解できた。
「いらっしゃい、志麻くん」
そこは以前家族旅行で泊まった温泉旅館の部屋のような、落ち着いた和風の空間だった。
畳の上には小さな座卓と、ふたつの座椅子。そのひとつに着物姿のセンラさんが寛いだ格好で座っている。座卓の上に置かれたふたつの湯呑茶碗からは、俺が来るのを見越してちょうど今淹れたかのように、ほかほかと湯気が立ち上っていた。
「……センラさん」
「来てくれてありがとう。そこ座って」
促されるまま、空いているほうの座椅子に腰を下ろす。
「それ緑茶なんやけど、ジュースとかコーラの方がええかな?」
「ううん、これでええ。いただきます」
「お菓子もどうぞ」
センラさんがそう言うと座卓の上にお菓子の乗った小皿が二皿現れた。綺麗なお花の形をした和菓子。知らない人にもらったものは食べちゃいけませんという教えが頭をよぎったが、センラさんはこの前会ったことがあるから知らない人ではない、第一神様だから人ではない、そもそも弟を助けてくれたセンラさんが俺に悪いものなど食べさせるはずがない、という理論を立ててから俺はお花のお菓子を頬張った。
「おいしい!」
「せやろ。まだあるからいっぱい食べてええよ。いくら食べても、ちゃんと夕ご飯の時にはお腹すくようにしといたるから」
涼しい顔でセンラさんは言うけれど、やっぱりすごい。神様だもん、できないことなんてないんだろうな。
「センラさん、弟を助けてくれてありがとう」
あっという間に食べ終わった俺は改めてセンラさんにお礼を言った。
「ええねん、べつに俺が助けたわけちゃうから。元々ただの風邪で、俺は元気になるのをちょっと早めてやっただけや」
皿の上には、さっきと微妙に色と形の違うお花のお菓子がもう乗っている。
「ねえ、センラさんは心をこめてお参りすればどんな願い事も叶えてくれるんでしょう?」
二つ目のお菓子を頬張りながら、俺はセンラさんに質問をぶつけた。
「まあ、できる範囲でな。あと、その人のためにならんことはせんけどな」
「……じゃあさ、俺がいっぱいお参りして、センラさんと友達になりたいって願ったら、叶えてくれる?」
勇気を出して切り出すと、センラさんは一瞬ぽかんとした表情を浮かべた。さすがのセンラさんも俺がこんなことを言うなんて予想できなかったらしい。
やっぱりだめかな。人間が神様と友達になりたいだなんて、分不相応な願いってやつなのかな。こんなに優しいセンラさんが急に怒り出したらどうしよう、そういえば、センラ様はご利益もあるけど恐ろしい祟りももたらす神様なんだったっけ。真剣な気持ちで言ったことには間違いないけど、もしかしたらふざけているとか、失礼だとか思われて祟られてしまうかもしれない。
「……」
数秒間、沈黙が続いた。俺は急に怖くなって俯いた。センラさんがこちらへにじり寄ってくる気配を感じ、思わず目を閉じた。
「何やねん、もぉ〜!!かわええな〜、志麻くん!!」
わしゃわしゃわしゃっと頭を撫でられた後、その手が下へと降りてきた。恐怖と緊張で強張った両頬が、センラさんの温かい手のひらでむにむにと解される。
「そんなんお参りなんかせんでええ!むしろ俺は、もう友達やと思ってたで?よろしくな、志麻くん」
ニッコニコのセンラさんにつられて俺の顔も緩む。直前の緊張があっただけに嬉しくて嬉しくて、天にも昇る心地というものをこの時俺は生まれて初めて味わった気がする。
もちろんまだ自覚はなかったが、これが俺の初恋であり、そして一世一代の大恋愛の始まりだった。
それ以来、俺は放課後や休みの日にしょっちゅうセンラさんのところへ遊びに行くようになった。
センラさんはいつも俺を優しく迎え入れてくれて、俺が学校や家族や友達の話をすれば楽しそうに聞いてくれたし、逆に嫌なことがあった時は真剣に話を聞き、慰めてくれた。宿題でわからないところがあれば教えてくれたし、一緒にゲームやスポーツをして遊んでくれたりもした。ちなみに、社殿の中の空間には広い庭もあるのでスポーツをする場所には困らなかった。またそういう時のセンラさんは着物からジャージに着替えて常にやる気満々だったし、時には大人げないほど俺と張り合ってくることもあった。
たまには神様らしい仕事をしていることもあって、近所の人たちから集まったお賽銭やお供え物を整理していたり、参拝者からの絵馬や手紙に真剣に目を通していることもあった。そういう時は終わるまで邪魔にならないよう待っているのだが、相手をしてもらえなくてもお仕事中のセンラさんを横で見ているだけで楽しかった。
要するに、センラさんは子どもの頃にこんな人が近所にいてくれたら嬉しいなと誰もが思うような、かっこよくて優しくて面白い憧れのお兄さんそのものだったのだ。神様であるということと、その存在を誰にも言えないということが普通と違っていただけだった。
「志麻くん、そろそろ好きな子できた?」
小学校の高学年にもなると、たびたびセンラさんからそんな質問をされるようになった。
「できひんよ」
「学校にかわいい女の子おらんの?」
「知らん、興味ないもん」
「もったいないなあ、志麻くんめっちゃ男前やのに。もうちょっとしたらモテてモテてしゃあないと思うで?」
「センラさんと遊んでた方が楽しいもん」
「ふふっ、そら嬉しいなあ。ま、恋愛相談やったらいつでも乗るから任せとき」
どうやらセンラさんは他人の色恋沙汰が大好きらしくて、参拝者の願い事の中でも縁結び系が一番腕が鳴るのだそうだ。
「……センラさん自身は、どうなの」
「ん?何が?」
「その、恋愛、とか……しとるの?」
「ちょっ、おま、神様になんちゅうこと聞いとんねん」
センラさんはケラケラと笑って俺の頭を軽く小突いた。
「だってさあ、センラさんて綺麗やし、かっこいいし……それこそ、めっちゃモテそうやん」
「ふふふ、嬉しいこと言ってくれるやん?でもな、神様は色々忙しくてそんな暇ないんです。そうやなあ、もう百年以上ないわ」
ということは、百年ちょい前にはあったんか。神様は恋愛せえへんってわけでもないんやな。いや、神様の寿命の長さ考えたら、けっこう最近なんやないの?そう思うとなんだかドキドキしたけれど、それ以上はきっと教えてくれないんやろうなと思った。案の定、センラさんは最近俺が貸してあげたマンガの話なんか始めて明らかに俺の気を逸らそうとしてきた。色々忙しい言うてたわりに、あのマンガにドハマりしとるやんこの神様。
「センラさんは、さぁ……その、祟ったりとか、することも、あるの……?」
「ん?なんて?」
ずっと気になっていたことをある日思い切って尋ねてみたら、返ってきたのはきょとーんとした反応だった。
「いや、だからその、祟ったりとか……」
「タタッタリ……?あー、あー、祟るってことね?祟りね?えっ、俺そんなことせえへんよ?」
その返事を聞いて心の底から安堵した。やっぱり神様やから、もしかしたら俺には見せない恐ろしい一面も持っているのかもしれないなんて思っていたけど。やっぱりセンラさんはセンラさんだった。
「なんでそんなこと思ったんよ、志麻くん」
「だって、じいちゃんやばあちゃんが言ってたから……粗末にしたり無礼なことしたら祟られるって……」
「しいひん、しいひん。俺そんなこといちいち気にせんから」
「じゃあ、ものすごく悪いことしても祟らへんの?」
「悪いことした奴は人間の法律で裁かれればええし、それをすり抜けた奴は地獄に行くだけやから」
「……なるほど」
センラさんの台詞は寛大なようで恐ろしくもあったが、あまり深くは考えないことにした。
「じゃあ、なんでじいちゃんたちにはそんな風に思われてたんやろ?」
「なんでやろな?俺、一回もそんなこと……あっ」
「えっ?」
「あ、いや、うん……そんなことせえへんから」
「……今、なんか思い出してなかった?」
「いやいや、べつに」
「ちょっと待って、なんかあったんちゃうん?思い当たる節あるんやないか!?」
「ないない!この話終わり!」
「センラさーーん!!」
結局いくら食い下がってもごまかされてしまったが、どうもあの様子では一度くらいは人を祟ったことがあるのかもしれない。
あのセンラさんが祟るくらいなら、よっぽどの事情があってのことだったんだろうけど……念のため、怒らせないように気をつけよう。
「センラさんにできないことってあるの?」
「そら、いっぱいあるよ」
また別の日にはこんな質問もしてみたのだが、意外とあっさり答えてくれた。
「こんなちっちゃい神社やからな。力の届く範囲みたいなもんは限られとんねん。たとえばな、最初に会った時に志麻くんの弟がただの風邪やって教えてあげたやろ?あれは近くの病院におったからわかったんや。弟くんがもっと遠くの方まで行ってしまうとわからへんねん。そうなるともう、俺にはなんもできひん」
「へー、そうなんだ」
「大したことない神様でごめんなぁ。がっかりした?」
「ううん、そんなことない」
首をぶんぶん横に振った。万能なのかと思っていたセンラさんの力にも限りがあるということは確かに意外だったが、がっかりなんてしない。むしろ親しみが増したくらいだ。
「せやから、願い事を叶えてあげられるのもご近所さんが精一杯なんや。その分、絶対手は抜かんけどな」
「……でもここ、そのうち廃神社になっちゃうんでしょう?じいちゃんばあちゃんが言ってたよ」
「そうなんよ。ここのこと気にかけてくれる人らもどんどん高齢化しとるからなあ、そのうちそうなってしまうんやろなあ。それ以前に、ここの土地持っとる人が今は放ったらかしてるけど、明日にでもあの神社取り壊そうって決めたらもう、終わりや」
「えっ……そ、そうなったら、センラさんは……」
「心配せんでええよ。一応俺も神様の組合みたいなもんに所属しとるから、次の職場くらいは世話してもらえる。牛丼屋がつぶれたら、そこの店長が他の支店に行くみたいなもんや」
「……そっか」
ここがなくなってもセンラさんに行き場はあると聞いてとりあえずは安心したが、そうなればもう、今のようには会えなくなる。そんなのは嫌だ。
「俺、大人になったらこの土地買うわ」
「えっ?」
「そうや、それがええ。そうすれば取り壊される心配もないやろ。神社のこともようわからんけど勉強する。世話してくれるじいちゃんばあちゃん連中がいなくなっても、ちゃんとこの神社が続くようにしたる」
「……ありがとう。めっちゃ嬉しい」
なんだろう、胸が痛い。照れたように、ふにゃっと笑うセンラさんを見て、胸がきゅっと締めつけられるような痛みを感じた。
「でも無理せんでええよ。大人になったら自分の家買うたり、結婚したり、子育てしたり、色んなことせなあかんし、お金もいっぱいかかるから。志麻くんは志麻くん自身のことを最優先にして生きてってな」
そう言うとセンラさんは俺の頭をそっと撫でた。
「でも、その気持ちだけでほんまに嬉しいよ」
センラさんとの蜜月は、小学校の卒業と共に終わりを迎えた。父親の仕事の都合で、両親と弟と俺は祖父母の家を出て引っ越すことになったのだ。
「そっかあ、残念やなあ。志麻くんおらんと寂しなるけど、元気でな」
「……年に何回かはこっち来れると思う。そしたら絶対に会いに来るから」
「ああ、楽しみに待っとるよ」
本当はセンラさんと離れたくなかった。引っ越さなくて済むようにしてほしいとセンラさんにお願いしたかった。でも、父親にとっては夢が叶っての栄転らしくて両親ともすごく喜んでいた。それを無しにすることなんてできない。第一、単なる我儘からの願い事などセンラさんは聞いてくれないだろう。そう思って辛さも寂しさもぐっと堪えていた。
「これから会うたびにイケメンになるんやろなあ。センラ、キュンキュンしちゃいそう」
俺が泣きそうなのを察しておどけるセンラさんの言葉を、絶対に本当のことにしてやろうと思った。
だが俺の一世一代の大恋愛、この時点でまだ、自覚は無い。
「センラさん、久しぶり」
「おう、志麻くん久しぶり……って、めっっっちゃイケメンになっとる……」
中学生になった俺は、夏休みと年末年始、余裕があれば春休みやGWにも祖父母の家に帰り、センラさんへ会いに来ていた。
「ふははっ、センラさんそれ毎回言うやん」
「いや言わずにおれんよ。ほんま、予想以上に仕上がってきたなあ」
背も伸びて声変わりもして、どんどん男っぽくなってきた俺とは違って、神様であるセンラさんの見た目はまったく変わらない。相変わらず、二十代後半くらいの綺麗な青年のままだ。
「さすがにモテるやろ?」
「んーんー、まあね」
小学校の頃は女の子に関心がなかった俺も、中学生にもなれば自然にそういうことへの興味が湧いた。おまけに自他ともに認めるイケメンへと成長を遂げた俺には、女の子からの告白が絶えなかった。センラさんと離れてしまった寂しさを無意識のうちに埋めようとしていた部分もあったかもしれないが、とにかく俺は常に女の子と交際するようになっていた。あまり長く続いた試しがないのは自慢できることではないが、付き合っている間はちゃんと大事にしたつもりだし、二股も絶対にしなかった。
「なあ、もう童貞卒業した?」
「うっ……それは、まだ」
神様らしからぬ(今更だが)俗っぽい質問をぶつけられて俺は言葉に詰まった。女の子には不自由していないのに、なかなかその機会には恵まれない。というより、機会はあっても俺がなかなか踏み出せないのだ。
「まあ、まだ中学生やしな」
センラさんに頭をぽんぽん叩かれ、さすがにちょっと凹む。
「……センラさんは、いつ捨てたの、童貞」
「だーかーら、神様にそういうこと聞くなって」
「教えてよ。真面目に聞きたいねん」
「覚えとらん!千年以上前やたぶん!」
軽くあしらって逃げようとするセンラさんだったが、そうは問屋がおろさない。何しろ俺は、深い悩みを抱えているのだ。
「ねえセンラさん。童貞ってどうやって捨てたらええんや」
「はっ?」
「俺あかんねん。そういう雰囲気になっても逃げてまうねん。なんか、こう、自分も初めてやし相手も初めてやしって思うと、怖いんよね。俺のやり方間違ってたらどうしようとか、痛い思いさせたらどうしようとか、考えてしまって」
「おう、そうか。ええやん、男はそれくらい紳士な方がええで」
「でもな、そうすると結局、女の子を怒らせたり傷つけたりしてまうんよね。自分がその気になってんのに男に逃げられるって、女の子にとっては相当ショックみたいでさ。それで何回もダメになっとる」
「うーん、まあ、女の子の気持ちもわからんでもないな。しかし最近の女の子は積極的やなあ」
「いっそのこと男慣れした女の子に教えてもらうくらいの方がええのかもしれんけど、あんまりそういう子を好きになれたことがなくて。好きでもないのに筆下ろしのためだけに付き合うのも違うやろ。後が怖いし」
「なるほどなあ」
「なあどうしよう、センラさん。俺もう女の子を傷つけるの嫌やねん」
「贅沢な悩みやな……うーん……うーん……ちょっと待ってなぁ」
センラさんはしばらく真剣に考えている様子で、どうかなぁ、あかんかなぁ、とブツブツ呟いていたが、やがて意を決したようにこちらを見つめて「志麻くんさぁ」と切り出した。
「いっぺん、俺で練習してみる?」
「……へっ?」
「俺、志麻くん好みの女の子の姿になったるからさ。やり方も手取り足取り教えたるし、俺と志麻くんの仲なら後で面倒なこともないやろ」
「え、ちょ、え……えぇっ?」
センラさんが言っていることの意味は頭では理解できたが、感情面での理解が追いつかない。本気なのか冗談なのかの判別もつかず、間の抜けた声で聞き返すことしかできなかった。
「あ、もちろん志麻くんが嫌ならええんやけど。ごめんな、キショいこと言って」
俺の戸惑いっぷりを見て、センラさんが気まずそうに笑いながら提案を引っ込めようとした。その時なぜだか急に俺の中のスイッチが入り、「待って待って待って!」と慌ててセンラさんを引き止める。
「嫌じゃない、嫌じゃないから!ちょっとびっくりしただけ!全然キショくない!!全然いい!全然ええねん!!」
「あっ……そ、そう?」
今度は俺のあまりの勢いにセンラさんが気圧され気味になっていた。童貞怖ぁ……とでも思われているのかもしれないが、この際なんだっていい。センラさんの気が変わらないうちに、承諾してしまおうと思った。
センラさんで童貞を捨てられるなんて、最高じゃないか。
この時の俺は心からそう感じていたのだ。突然降って湧いたこの僥倖を、何としても逃がすものかと思った。
「よろしくお願いします!!」
深々と頭を下げながら差し出した俺の手を、センラさんが苦笑いしつつも優しく握ってくれた。
「……こちらこそ」
俺がシャワーを浴びている間に、センラさんが色々と準備を済ませてくれていた。
今までにも何回かお泊りしたことはあったが、その時用意してもらったのはいつも遊んだり寛いだりする部屋にただ布団を並べて敷いただけの、ごくシンプルな寝室だった。
今日はわざわざそのための部屋を別に用意してくれたし、なんだか照明の色もムーディーだし、いい匂いも漂っているし、ひとつだけ敷いた布団はいつも以上にふっかふかで肌触りがいい。こういうのが全部、センラさんが俺に抱かれるために整えてくれた環境だと思うと、それだけでなんだかものすごく興奮してきた。
「えーっと、じゃあ、どんな女の子がいいですか志麻くん」
布団の上にきちんと正座したセンラさんが尋ねてきた。照れているのだろうか、やや伏し目がちに微笑んでいるのがたまらなく興奮をそそる。だが、どんな女の子がいいのかという肝心の問いに対してはなかなか考えがまとまらなかった。好みの女の子のパーツを頭に思い浮かべても、それらがうまく全体像を結ばないのだ。
(センラさんのまんま……ってわけにはいかへんのかな)
「ふふっ、迷うよなあ。こんな感じでどうや?」
「あっ、うーん、いい……けど、うーん……」
「あんまりか。じゃあ、こんなんは?」
俺がもじもじしているのを見かねて、センラさんが自分から色んなタイプの女の子に姿を変えて見せてくれた。センラさんのままがええ、とは結局言えなかったものの、俺も徐々に自分の希望を伝えていき、最終的にはめっちゃ細かく注文をつけていた。
「年齢もっと上でええ。お姉さんがええ」
「髪はもうちょっと短くして」
「足がすらっと長いのがええ」
「目はさっきの方がええかも。戻して」
「下唇ぽってりさせて」
「ここにホクロほしい」
「もうちょい撫で肩にできる?」
そうして微調整を繰り返した結果、なんだかんだセンラさん要素をかなり強く残した美女が出来上がった。服装も和服のままがよかったんやけど、「和服の女の子とセックスすることそうそうないやろ」というセンラさんの指摘により、ちょっとセクシーなOL風の洋服になってしまった。それはそれでまあ、良かったけど。
「うん、それ!それがええ、その姿がええ」
「うふふ、完成やね。ほなおいで、志麻くん」
「……!」
両腕を広げたセンラさんの胸の中へ飛び込んだ。柔らかい谷間に顔を埋めてふんわり香るお花のような匂いをかぐと、センラさんの手のひらが頭の後ろにそっと添えられる。鼓動が速まり、呼吸が自然と荒くなる。身体の中心が熱く煮えたぎりそうなほど興奮してきた。
「志麻くん、センラをお布団の上に優しく押し倒して」
「は、はい」
「そうそう、そんで上に覆いかぶさって、でも女の子に体重かけたらあかんよ、腕で支えとってな。とにかく焦ったらあかん、ゆっくり、優しくな」
言われるがまま、仰向けに横たわったセンラさんの上に覆いかぶさる。顔と顔がぐっと近づいて、お互いの吐息が交わるのを感じた。確かに手取り足取り教えたるとは言われたけれど、予想以上に教え方が丁寧でびっくりした。
「志麻くん、ほんまにイケメンさんやなあ」
うっとりした顔のセンラさんに囁かれて、身も心もますます昂ってしまう。
「センラさんも、綺麗や。すごく綺麗」
「そう?よかった。時間かけた甲斐あったな」
鏡で全体像を見ていないセンラさんは、あれこれ試行錯誤した末に性別こそ変わったがだいぶ原型を残した状態に落ち着いたことに気づいていないみたいだ。こういうとこ、この人ちょっと抜けてるなと思う。人じゃなくて神様なんやけど。
「ほな、ちゅーしよか。最初は軽くで、何回かしたら舌入れてええよ。で、ちゅーしながら服の上から身体撫でて?」
「はいっ」
「ふふ、ええ子。んっ……」
唇をそっと重ねて、離す。角度を変えて、もう一度。何度か繰り返した後に、ぽってりした唇の隙間から舌先を割り込ませた。同時にセンラさんの身体を撫で始めれば、首の後ろにセンラさんの両腕が回された。熱い吐息が顔にかかる。やばい、センラさんも興奮しとるんかな。めっちゃ嬉しい。
「志麻くん……脱がせて?」
息継ぎをして唇が離れたタイミングで、センラさんが囁く。首に回されたセンラさんの両腕が解かれ、布団の上に投げ出された。その無抵抗な両腕が、志麻くんの好きにしていいよと言われているみたいでますます興奮した。
極度の興奮と緊張で震える指先で、センラさんの着ているブラウスのボタンを外す。胸の前をはだけて現れたのは紫色のめっちゃエッチなブラジャーに覆われた、ほどよいサイズのおっぱいだった。
「後ろ、外せる?」
寝返りを打って横向きになったセンラさんに、背中のホックを外すよう促される。
「えっ?何やこれ、むっず……」
「俺もこれはようわからんのよね。慣れれば片手でもいけるらしいから、がんばれ」
そっか、センラさんの最後の恋は百年以上前なんやった。その頃には今みたいなブラジャーは無かったんかな。そんなことを考えていたら余計にモタモタしてしまったけど、どうにか外すことができた。
ブラジャーという難門を突破した後も、ぴっちりとしたスカートを脱がすのにまたもや苦戦し、その後ストッキングを脱がすのにもさらに苦戦し、ブラジャーとお揃いの紫色のパンツを拝めた頃にはもはや汗だくになっていた。
「ようがんばったな。よしよししたるから、おいで」
綿菓子みたいに甘くふわふわしたセンラさんの声に導かれ、吸い込まれるようにおっぱいに顔を埋めた。センラさんの手が後頭部を優しく撫でる。そのまま目を閉じてセンラさんのおっぱいと手の感触をしばし堪能した。
よしよし、よしよし。センラさんの声は女性のものに変わっているけれど、透き通るような、包みこまれるような、はんなりした声音はいつものセンラさんのままだった。
「志麻くん、おっぱい触ってええよ?いきなり乳首はあかんで、外側から徐々に中心へ向かう感じでな」
言われた通り、センラさんのおっぱいを外側から内側へ向かって円を描く要領で撫でていった。やがて桃色の乳輪へたどり着き、手のひらを指先へ変えてくるくるなぞり、だんだんと円を小さくしていく。
「あ、んっ……」
固く尖り始めた先端に触れるとセンラさんの口から色っぽい声が漏れた。うわうわうわ、そんな声出すんや。
「センラさん、舐めてもええ?」
「ん、ええよ……あっ」
舌先で桃色の尖りに触れ、小さく転がす。口に含んで軽く吸う。一旦唇を離して、唾液に濡れ光る尖りを指の腹でくにくにと弄る。
「あ、あっ……んんっ……ひぁっ、しま、く……ん」
センラさんの反応を確かめながらじっくりと乳首を愛撫する。片方は口で、片方は指でひとしきり可愛がったら、今度は左右を交代して同じことをする。俺の行為ひとつひとつがセンラさんのこんな色っぽい反応を引き出しているという事実に、震えるほど興奮した。
「しま、くん……ええよ、上手やね。もう、下の方、触ってええよ……」
「まだや。まだおっぱい触りたい」
下の方も、もちろん触りたい。だけどおっぱいから離れがたいという気持ちの方が強かった。どんどん先に進むよりも、センラさんの身体をじっくりゆっくり、余す所なく味わいたかった。何しろこんな機会、もしかしたら二度とないのかもしれないだから。
「んふっ、おっぱい好きなん?ほんならええよ、練習やから好きなだけやりや。でもな、本番ではあんまりしつこくしたらあかんよ」
鷹揚なセンラさんに甘えて俺はその後もおっぱいに触り続けた。撫でて揉んで舐めて吸って、一連の動きが終わったらまた最初に戻って繰り返す。自分でもちょっとしつこいな、と思うくらいの時間が経ったがなかなか止められない。センラさんに止められるかと思ったが、どれだけ弄り続けてもセンラさんは切なげな喘ぎ声の他には何も言わなかった。本当に、好きなだけやらせてくれるみたい。どんだけ優しいねん。
「んっ……ふぅ、ふっ、うぅ……あっ、ん、んんっ……」
センラさんはシーツを握りしめ、身をよじってひたすら悶えている。きゅ、と少し強めに指先で先端を摘むと嬌声とともに身をのけぞらせ、白い喉が露わになった。桃色だった両方の乳首は心なしかさっきよりも赤味を増してぷっくりとしている。
先端を口に含んで、ちゅうちゅうと吸った。さっきからの反応を見るに、これ、センラさん好きみたい。ちゅうちゅう、ちゅうちゅう、しばらく吸った後、最後にちゅうううぅぅぅっと長く、強めに吸い上げた。
「ん、あ、あっ、あ〜〜〜あっ!」
ひときわ大きな声とともに、センラさんの身体がびくびくと跳ねたのでびっくりしておっぱいから顔を上げた。
「センラさん、大丈夫?」
「ん……だい、じょぶ……」
くしゃくしゃに乱れたシーツの上にぐったりと横たわるセンラさんの顔を覗き込むと、半開きの目はとろんと虚ろになっており、同じく半開きの口からは一筋の涎が垂れていた。あ、これって、もしかして。
「ごめん、い……痛かった?」
「ふふ、へーき、痛ないよ」
力なく微笑んだセンラさんに頭を撫でられる。
「気持ちよすぎて、おっぱいだけで軽くイッてもうた。志麻くん上手や、素質あるで」
「えっ、ほ、ほんまに?」
やっぱり、イッてくれてたんや。俺がイカせた。センラさんを、俺が。
「うん、あと俺との相性もええのかもしれん」
元々興奮してたのに、更にテンションが爆上がりする。上手だと言われたのも嬉しいが、相性がいいと言われたのはもっと嬉しかった。
「志麻くん、ちゅーして?」
あかん、かわいい。むしゃぶりつくように唇を合わせて舌を絡める。いっぱいちゅっちゅした後に、センラさんが俺をぎゅっと抱きしめながら耳元で囁いた。
「志麻くん、ちゅーは最初だけじゃあかんのやで。合間にいっぱいしてあげたら女の子は喜ぶからな」
「うん」
「なあ、もう下も触ってくれるやろ?」
「うん!」
ずりずりと布団の足元側へ移動する。センラさんは恥ずかしそうに両膝をこすり合わせてもじもじしていたが、やがて俺を迎え入れるように両足を広げてくれた。センラさんの足の間に入り込んでポジションを落ち着けてから、ドキドキしながらそっとその部分に手を伸ばした。
「うわ……」
「ふふっ、もうびしょびしょやろ。恥ずいわぁ、志麻くんのせいやで」
センラさんの奥から溢れ出しているらしいぬるぬるとした液体が、シーツまで濡らしている。思わず生唾を飲み込んだ。
「志麻くん、わかる?ここが、挿れるとこやで。もしまだ濡れてなかったら、こっちの方。ここを優しく触ってあげるんやで。敏感なとこやから、ほんまに優しくな」
センラさんが俺の手を取り、溢れ出す蜜の出処を確認させてから、少し上の方へ移動させた。花びらの奥にある芯の部分へと導かれた俺は胸を高鳴らせながら指先でそっとそこに触れ、ぬるぬるを塗りつけるように優しく擦ってあげた。
「んっ……そう、ええよ……そーっと、そーっとな……ん、あ……じょー、ず……」
ぴくん、ぴくんとセンラさんの身体が小さく動くたび、興奮が高まっていく。もっと気持ちよくさせたい。もっともっと。
「あっ、も、ええよ志麻くん、んんっ……、俺は、もうっ、ん……っ、濡れてるから、ええねんっ……」
そこへの愛撫を止めようとしてセンラさんが手を伸ばしてくるが、空いている方の手でそれを制した。
「これだけじゃ練習にならんやん。もっとやらせて。ね?」
「うっ……、そ、そうやな……」
当初の目的である「練習」を持ち出せば、センラさんは簡単に折れてくれた。だが俺にとってはもはや練習とか、童貞を捨てるとか、そんなことはどうでもよくて、とにかく目の前のセンラさんを気持ちよくさせたいという思いしかなくなっていた。
「あ、あっ……ん、ん、んぁっ……」
指の腹で、優しく優しく捏ねくり回す。センラさんが快感に身を捩るたび、おっぱいがぷるんぷるんと揺れる。
「なぁセンラさん、舐めてもええ?」
「え、あ……え、ええよ……」
身を屈めてセンラさんの足の間に顔を埋める。ごくりと唾を飲み込んで、おそるおそる舌先を突き出してそこにちょんと触れる。それだけでセンラさんは甘い声を漏らした。
「あ、んっ……」
「センラさん、どんな風に舐めてほしい?」
「あ、え、えっとな、下から上に、優しく舐めあげて……」
「こう?」
「んあっ……!そ、そう……そんでな、乳首とおんなじように、先っぽの方、くわえて、舌で転がして……んんっ、そ、そうや……あっあっ、そ、そう、そこっ……んっ……!え、ええよ、しまくん、んあっ、じょ、じょーず……」
おそらくやけど、センラさんは俺にこんなにも感じさせられることは想定していなかったんじゃないだろうか。だが俺には素質があって、センラさんとの相性もバッチリで、何よりもセンラさんを気持ちよくさせたいという熱意があった。想定外のしつこい責めに啼かされながらも、手取り足取り教えるという最初の約束をあくまで遂行しようとしているセンラさんがいじらしい。
「あ、あかん、しまくん、あかん、いくっ、いってまう……っ」
センラさんの上半身がシーツから浮き、太ももが俺の頭をぎゅっと挟む。びくびくと痙攣するセンラさんの身体が落ち着くのを待ち、口を離して目線を上げた。センラさんは片腕で顔を隠すようにして荒い息を整えていた。
「センラさん、またイッた?」
「んふっ、ごめん……イッてもうた」
何に対してごめんなのかわからないが、センラさんは恥ずかしそうにくすくす笑っている。
「これだけじゃ練習にならんから、もうちょっと続けてええ?」
「えっ?ちょ……」
センラさんの返事を待たず、再び足の間に顔を埋めた。さっきよりも充血して膨らみを増したそこをもう一度口に含み、舌で優しく擦って転がす。
「んっ、あっ、あかん、あかんて志麻くん、ひあっ、だめ、だめやって……イッてすぐは、あかんのっ……!!」
センラさんが弱々しく俺の髪を掴んで引き離そうとするが、俺はセンラさんの太ももの付け根に腕を回して動かないようにがっちり固定した。止めるどころか舌の動きを少し速めて刺激を強める。耳に届くセンラさんの嬌声が、次第に泣きそうな声音に変わってきた。
「やぁっ、やだ、あ、あっ、しまく、だめ、だめぇ……っ!」
もう一度、センラさんの両腿で頭がぎゅっと締めつけられた。半泣きになりながら、はふはふと犬みたいに荒い息を吐いて横たわるセンラさんへと近づく。反省したようなふりをして。
「ごめん、センラさん、俺夢中になってもうて……大丈夫?」
「志麻……くん、もう……わるい、子やなあ」
涙のいっぱい溜まった目で、へらりとセンラさんが笑う。頭を撫でてくれる。ちょろい神様やなあ、なんて、心の中におる悪い志麻が狡く笑う。
「本番では、ちゃんと女の子、休ませたらなあかんで……?立て続けにイクのは、しんどいんやからな」
「うん、ごめん」
もっと怒ったっていいのに、あくまで自分は練習台で、だから多少は無茶をしてもいいのだと言わんばかりの態度を崩さないセンラさんに、もどかしさと苛立ちを感じる。
「志麻くん、ここ、きついやろ」
センラさんが手を伸ばして俺の股間に触れた。パンパンに張り詰めたそこは、先走りで湿った下着の中に長時間押し込まれたまま、早く解放してくれと訴えている。
「挿れてええよ」
「えっ、でも……センラさん、しんどいんやろ?少し休憩……」
「ええの。志麻くんこそ、ずっと我慢しててしんどいやろ?俺ばっか気持ちよくなってごめんなあ」
なんで、そんな言い方すんの。俺が勝手にやったことなのに。あかん、なんか俺まで泣きそうや。
「志麻くん、ゴムの着け方はわかる?」
「あ、うん。それは練習したことある」
「そうか、ほんなら今日は特別にゴムなしで、中に出してええよ。わかっとるやろうけど、本番はぜっっったいに着けるんやで」
「えっ……いいの?マジ?」
「マジマジ。神様やから、病気も避妊も気にせんでええ」
ギンギンに興奮してた股間がさらにドクンと膨張した。剥ぎ取るようにパンツを脱いで、センラさんの足の間へと急いで戻る。
「あ、待って志麻くん」
さあ挿れるぞと思った矢先に呼び止められた。え、なに?と焦ってセンラさんの顔を見ると、ドヤ顔で「なんか忘れてへん?」と言われた。
「えっ……な、なんかって……」
「さっき言うたやろ」
「あ、ちゅー、ですね……」
慌ててセンラさんに唇を重ね、舌を絡めて唾液を混じえる。キスをしながらセンラさんがもぞもぞ動いて、足を大きく開いた。
「ん、ね、そのまま挿れて……ゆっくりな」
キスをしたまま挿れてほしいらしい。ノールックで挿れるのは童貞にはハードルが高かったが、センラさんがうまく誘導してくれた。いきり立ったちんこの先をセンラさんの蜜壺の入口にくっつけ、そのままゆっくりと侵入していく。
「んむっ……ゆっくり、ゆっくりやで……んぐ、あっ……」
熱いキスを交わしたまま、センラさんの下の口にゆっくりと俺のちんこが飲み込まれていく。首の後ろにがっちりとセンラさんの腕が回されて、身体が密着する。素肌が直に触れ合う感触が気持ちいい。
「ん、あっ……おっきぃ……んむぅ」
「……センラさん、ぜんぶ、入った……」
「ん……ほんま?」
「うん」
「なあ、ちょっとだけ、このままでおって……」
そう言うとセンラさんは腕だけでなく両足も俺の身体に回してがっちりとホールドした。かわええ。何やこの神様、かわええ。センラさんの中の俺がまた質量を増す。それを感じたのか、俺の下でセンラさんが小さく呻いた。
「ふふっ……志麻くん。童貞卒業おめでとう」
「うん。ありがとう、センラさん」
「どうですか、センラの中は」
「うん、めっちゃ気持ちええ。熱くて、とろとろして……なんかうねって絡みついてくるし、ほんで、きゅうきゅう締めつけてくる」
「……そこまで詳しく言わんでええ」
ぽすん、と後頭部を叩かれた。センラさんがくすくすと照れくさそうに笑い、俺の肩に顔を埋めた。あーかわええ。死ぬほどかわええ。
「志麻くん、動いてええよ」
センラさんが手足の力を緩めたので、自由に動けるようになった。ゆっくりと腰を引いて、最奥まで埋まったちんこを引き抜いていく。ギリギリまで引き抜いたところで、またゆっくりと奥まで挿れていった。
「んっ、あっ……」
「センラさん、気持ちええ?」
「うん、きもち、ええ……」
「速くしてもええかな」
「ん、ええよ……あっ」
抜き差しするスピードを少しずつ速めていく。肉と肉のぶつかる音と、微かな水音と、吐息混じりの喘ぎ声が静かな和室に響く。
「う、あっ、んん、うっ、ふぅっ……」
俺が腰を打ちつけるたびに、真っ白いおっぱいがゆさゆさ揺れる。センラさんは顔を背けてシーツをきつく握りしめていた。
「センラさん、顔、見せて」
「ん、いやや……はずい」
「お願い」
「だ、め……あっ……」
センラさんのほっぺたに手を添えて、ちょっと強引に正面を向かせる。最初は目を閉じて抵抗していたセンラさんだったが、俺が何度もこっち見てとお願いするので観念して目を開けてくれた。
「あっ、んんっ、しま、くんっ……はぁ、あっ……」
何度も何度も俺に突き上げられながら、恍惚とした表情で見つめてくるセンラさんが、今この瞬間俺にとっては間違いなくこの世で一番愛しい存在だった。
ああ、俺は。
「あ、あぁっ、志麻くんあかん、きもちい、ひぁっ、あんっ、あぁ……っ!」
俺は、この人が。ちゃう、この神様が。
「だめ、しまく、いくっ、もういくっ」
かっこよくて優しくて面白い、理想の近所のお兄さんみたいなこの神様が。
「ええよ、センラさん、俺も、いくっ……!」
「あ、ああっ、〜〜〜んっ、うぅっ〜〜〜っ!!」
びくびくと痙攣するセンラさんの身体を抱きとめて、唇を押し付けるようにキスをした。
「んむ、んんっ……」
びゅくびゅくと、溜め込んだ欲がセンラさんの中に吐き出されていく。センラさんの内側が絡みつくようにして、俺の精を搾り取っていく。
静かになった寝室に、しばらくの間、むせかえるような濃密な性の香りと、二人分の荒い呼吸音だけが漂っていた。
「センラさん……大丈夫?」
「ん……だいじょ、ぶ」
「ちゅー、しよ?」
「うん……」
センラさんは半ば放心状態ながらも、俺のキスを受け止めながら頭を撫でてくれた。
「センラさん、ありがと……すっげー、よかった……」
「そう……?なら、よかった」
「ほんまによかった。初めてがセンラさんで、ほんまに、ほんまによかった」
「うふふ、光栄やわあ……なあ、志麻くん」
「ん?」
「まだ治まってないやろ?」
「……」
図星だった。元気の有り余った中学生の性欲が、たった一回だけで治まるはずがない。でも、センラさんはもう何度もイカされて疲れてるはずで。
「ええよ、志麻くん。満足するまで、好きなだけ練習しいや」
「で、でも……」
「あ、もちろん本番ではちゃんと女の子休ませなあかんで?今はええよ、センラさんは神様やからな」
「……」
何やねん、事あるごとに練習だの本番だのって。確かにこれは練習やけど、最初からそういう話やったけど、でも、でも、俺は初めてをあんたに捧げたんや、あんたに気持ちよくなってほしくて、こんなに一生懸命やったんや、ほんで俺は、気づいてもうたんや、俺は、あんたを、あんたのことを。
「……センラさん」
「ん?」
「俺、バックも練習したい」
「おお、ええよ」
「対面座位も」
「ええよええよ」
「あとシックスナインもやりたいし、立ちバックと寝バックと、駅弁も挑戦したい」
「……ふ、ふふっ、元気やなぁ」
センラさんの笑いがさすがにちょっと引きつってるのを感じたが、すっかり不貞腐れた俺は遠慮も手加減も一切してやらんという気になっていた。
中学生志麻、青春真っ盛り。神様に童貞を捧げたこの日のことは一生忘れん。
そしてようやくこの日俺は自覚したのだ、自分がこの神様に恋をしていることを。初恋で、一目惚れだったことを。
俺の一世一代の大恋愛の、これが本格的な幕開けだった。
〈つづく〉
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